慟哭ノプラチナ
     色々なときめきに右往左往する毎日を、つらつらと書きます。 テンションは日によって変わる感じ。眠りについたあとは、夢でお逢いしましょう。
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柚木×月森
聖しこの夜


空には月が浮かんでいた。
練習を終えて帰路につく頃は、いつでも辺りはすっかり闇に染まり、肌を刺す風が酷く冷たく感じられるものだ。
「月森君」
それでもこの季節になると夜の街は騒がしく豹変し、眩しいくらいに施されたイルミネーションが夜を照らす。そのとりどりの光がとても温かく感じられるのが不思議だった。
「月森君ってば」
呼び掛ける声に、俺は足を止め振り返る。
「柚木…先輩」
そして少しだけ戸惑いながら、声の主の名を呼んだ。
「何か考え事でもしていたの?僕が呼んでもちっとも気付かないんだもの」
「すみません。先輩こそ、今日は車ではないんですね」
「うんまぁ、たまにはね」
正直なところ、俺はこうして笑みを浮かべるこの男が苦手だった。考えていることが何も分からず、時折怖いと感じる事ことさえある。
「折角だから、一緒に帰らない?」
「…はい」
そうだと云うのにこうして、何かと俺に声を掛けては穏やかに笑うのだ。
「…」
それでも俺はこの響く沈黙が嫌いではなかった。理由などは分からない。名前の知れない感情を抱くなんて、本意ではないというのに。
「聖なる夜だというのにこんな時間まで練習だなんて。君は本当に熱心だね、月森君」
言葉はどこか皮肉混じりのように聞こえて、俺は僅かに顔を顰める。
「先輩こそ、練習の帰りじゃないんですか?」
「僕はいいんだよ」
肌寒い空気が二人の周りを包み込んだ。そこから足を進める暫くの間、俺は右肩の先に視線を送ることができずにいた。
「何か?」
「いえ…」
「変なの」
それでも彼が笑っているのだということは、僅かに漏れる吐息から知ることができる。生まれてくる焦りにも似た感情が、酷く胸を打った。
「ねぇ月森君」
「何ですか?」
「僕は、聖なる夜に願いが叶うなんて嘘だと思うんだけど…」
そしてまた、理解に苦しむ言葉をこうして呟くのだ。
「君は…?」
「えっ」
「君はどうなのかなぁと思って」
言葉が途切れても、空気に乗った騒音が耳に障る。
「俺は…」
「あっ」
そんなことに興味などないと、俺が告げようとしたその時。彼が発した声がそれを遮り、辺りにじんわりと響いていく。
「何ですか…?」
込み上げた僅かな苛立ちを隠して、彼に視線を送った。
「困ったな」
「柚木…先輩?」
「僕らしくないと、君は笑うかもしれないけれど…」
そう云って眉を寄せる横顔は、確かに彼の云う通りにらしくないそれで、俺は思わず笑みを零してしまう。
「月森君」
「…すみません」
それでも言葉とは裏腹に、名も知れぬ感情に温かさが重なっていくような気がしていた。
「先輩、続けて下さい」
彼は穏やかに頷く。そしてすぐ後に言葉が続いた。
「…願掛けをしていたんだよ」
「願掛け?」
「そう、この雪に」
彼につられるようにそっと手を伸ばすと、空から降る冷たい熱さが指先で溶ける。
「願いが叶うだなんて思わないけれど、それでももし今夜雪が降ったら、って…」
小さな吐息が白く染まり、忽ちに広がった。
「だから伝えるよ。君に、僕の思いを」
「…」
「一度しか云わないよ?僕は君を、とても愛しく思っているんだ」
「先輩」
「君と一緒に居ると温かい気持ちになれる。これは一体、どういう意味なんだろうね」
「柚木…先輩」
一息にそう云うと、彼は悪戯に笑うのだ。俺はそれがどこか悔しくて、意識して顔を背ける。けれどゆっくりと手のひらを差し出して、冷たくなった彼の指先を包んだ。

闇色の空にとりどりの光。吐息の白、溶け合う熱さ。
肩を並べる。聖なる夜に。



「聖しこの夜」柚木×月森
MERRY X'MAS!!! …with Love.
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