慟哭ノプラチナ
     色々なときめきに右往左往する毎日を、つらつらと書きます。 テンションは日によって変わる感じ。眠りについたあとは、夢でお逢いしましょう。
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弁慶×九郎
「祝音」


僕の心はこんなにも、君を探していた。
規則的に響く心音は、こんなにも心地のよいものだった。
降りしきる雨は、止む兆しを見せない。
けれど伝えましょう。
君がここに居てくれて、本当に良かった。



目覚めから続く不穏な空模様は、次第に雨足を強めていた。雨は好きではない。僅かに顔を歪めながら、弁慶はそっと胸に落とす。
「どうした?弁慶」
「いいえ、九郎。何でもありませんよ」
我ながら…と、身の内で呟きながら笑みを浮かべると、弁慶は傍らに掛ける九郎を見やった。
「云いたくないならいいが…」
小さく云うと顔を背けて、九郎は続ける。
「お前が云いたいのなら、何でも聞いてやるぞ」
「九郎…」
視線の先に映る横顔がどこか照れているような気がして、弁慶はそっと眉を上げた。思わず立てそうになる声をそっと堪える。九郎は顔を背けたまま、きゅっと口唇を結んでいた。
「本当に何でもないんですよ。ただ…」
「ただ?」
暫しの滑らかな沈黙を破るように、弁慶は言葉を紡いだ。
「ただ、雨は好きじゃない、そう思っただけなんです」
わざと少し体を寄せて、肩先に触れる。自分より高い九郎の体温が、弁慶はとても好きだった。溶けて分け与えられる熱に一時だけ身を委ねて、やがて音を並べる。
「悲しくて胸が痛くなるんです。ほら、…空が慟哭しているようじゃないですか」
雨は全てを洗い流して、重ねてきた嘘や罪を剥き出しにしてしまうような気がする。そんな思いがふと頭を過ると、弁慶は言葉を飲み込んでいた。
「君が泣いたら悲しい。それと同じことですよ」
けれど弁慶は、弱る心を悟られないようにそううそぶいてみせる。
「ふざけるな。俺は泣かんぞ」
しかし九郎はそれを許さなかった。
「九郎…そうですね」
小さく云って、弁慶はそっと目を伏せた。

「…っ」
「どうした?」
「いいえ…」
このまま耳を塞いでしまいたい。そんな衝動に駆られる。心臓が煩いほどに響いて、心を惑わすのだ。これは警鐘なのかもしれない。そんなことを思いながら、弁慶の手のひらは無意識に胸を押さえる。
「…苦しいのか?」
「え…?」
「胸を押さえている」
九郎の言葉にはっとして、その手を離した。行き場をなくしたそれが、幾度か空を掻く。
「心臓が…壊れそうで…」
弁慶は云った。消え入りそうな声音でもってそうとだけ。九郎は何も云わず、弁慶が続けるのを待っていた。

ただ、理由が欲しかっただけなのだ。今にも溢れ出しそうな、この感情の理由が。抜けるような空の下でも、同じように胸が苦しい。それが云い訳にすぎないなど、弁慶はとうに気付いていたけれど。
「だから、…雨は嫌いなんです」
自らを胸で嗤いながら、ゆっくりとそう呟いた。


「真っ赤に染まった空を、よく覚えている」
「…?」
「昨年の話だ」
ああ、と、弁慶は息を吐く。まるで鮮血のようなあの空を、彼自身もはっきりと記憶していた。
「太陽のように思えたんだ」
しっかりと前を見つめたまま、九郎は続ける。
「太陽が近くて、隣にはお前がいた。あの時俺は、鼓動が強くなるのを自分でも確かに感じた。…らしくないと笑うか?」
「…いいえ」
戸惑いが見透かされませんように。弁慶はそう願いながら、わざと低い声色でもって静かに伝える。
「それは今も同じだ。お前がこうして共に歩んでくれることに、俺は感謝している」
「九郎…」
そっと心を澄ますと、触れた肩先から感じる。強い思い、あたたかな熱。見据えた先に浮かび上がる、迷いのない後ろ姿。今にも泣きだしそうになるのを、弁慶は必死に堪えていた。
「時は決して止まることなどないし、俺もお前も1つずつ年齢を重ねる。だが…、変わらないものもあるのだと、俺は思う」
「そう…ですね」
鳴り響く轟音が気付かれなければいい。そんなことを浮かべながら、少しだけ九郎に委ねる。苦しさは、今では穏やかな痛みに形を変え、そっと弁慶を包んでいた。


心はただ強く、君を探していた。
規則的に響く心音は、こんなにも心地のよいものだったのだ。

降りしきる雨、触れた肩。
慣れた横顔に、轟音はいつまでも止まなかった。







HappyBirthday九郎!
書いてたら何か止まらなくなってしまって…だいぶ過ぎちゃったんですが。当日雨降ってたからさ、あはは!
去年書いた誕生日の話もちょっとだけ絡めつつ、弁九だったらこういうのも有りかなーって感じで。いつも、それこそ一万二千年経ったとしても、共に歩んでいられることへの感謝。うんうん。
弁九書いたのは久し振りだったのですが、凛とした九とぐたぐたな弁…の関係は変わらない模様です。

ともあれ、九郎おめでとう!今年もよろしく。
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